BRANDING
リブランディングの舞台裏
KELVIN H
2024年10月
日本の伝統と美意識を継承し、ブランドを革新する。
KELVIN H
2024年10月

TEAM
Nuevo.Tokyo™
Studio.Design
Alvaro Nuevo (アルバロ・ヌエボ)
スペイン生まれ、現在は東京在住。クリエイティブ&リサーチエージェンシーNuevo.Tokyo主宰。デジタルプロダクトのコンセプト開発やブランディング戦略策定に携わる。
Joe Ishii (石井 穣)
日本生まれ、現在はサンフランシスコ在住。デジタルデザイナーとして経験を積んだ後、StudioのCEOに就任。Studio全体のブランディング、プロダクト戦略、海外展開に携わる。
このインタビューでは、2人が共に取り組んだリブランディングプロジェクトについて振り返っていく。

クライアント
Studio株式会社
コラボレーター
Nuevo.Tokyo™
プロジェクト期間
2024年 4-8月
概要
Studioのリブランディング
目的
東京から愛を込めて、Studioを世界のブランドへ

01 / 04
The Challenge:
Connecting With More
より多くの人々の「創造性を解き放つ」という挑戦
Studioは8年前、渋谷の小さなオフィスでUIデザインに特化したプロトタイピングツールとして開発が始まった。現在は、誰もが直感的に高品質なWEBサイトを構築できるプラットフォームへと進化し、日本の企業からサンフランシスコのエージェンシーまで、幅広いユーザーをサポートしている。
Studioの思想の中心にあるのは「創りたい人が、創りたいものを作れる世界を当たり前にする」というビジョンだ。あらゆる分野の人々の創造性を解き放つために、今までより多くの人々にその哲学を共有する必要があった。


02 / 04
The Solution:
Returning To One’s Roots
原点に立ち戻ること
2社の協業の中で気づいたのは、Studioというプロダクトの方向性は、日本的美意識が軸となって決定されてきたことだ。アルバロは、日本では当たり前のことだったかもしれないが、自身の目から見るとそれはとても魅力的に映ったと語る。

Ma, Tatami, Iki
アルバロによれば、Studioにおける日本的美意識には3つの柱があるという。
「間(ま)」の概念 : 日本庭園では、中心となる要素に注目を集めるために、意図的に他の要素を減らす。思慮深い引き算から生まれた表現に、人は美しさを感じるのではないかと考えている。
「畳(たたみ)」の概念 : 指物(さしもの)や和室の畳など、日本の建築でよく見られるモジュールの概念。各構成要素が他の要素と上手く組み合わさるように設計されている。
「粋(いき)」の概念 : 自らを強く表現することではなく、慎みが尊ばれる。また、個人よりもチームやコミュニティを重視する。

ブランドのDNAをかたちづくるもの
2人はまず、これらの美意識を起点にブランドDNAを定義することから始めた。
石井 「クリエイターの作品が主役であり、Studioはそれを裏から支える。それがこれからのStudioのスタンスです」
アルバロ 「そうですね。それは、ブランドのストーリーテリングにおいてもそうです。ブランドが強く自己主張すると、人々は引いてしまいます。人はブランドからではなく、仲間から学ぶことを好みますよね。だから意図的に今回のプロジェクトではコミュニティのストーリーを語ることにしたんです。これは、次世代のブランドを構築する方法でもあると考えています」
石井 「確かに。数年前、IDEOのオフィスで『Make others sucessful(他人を成功させよう)』という標語を見たことを覚えているのですが、私たちの中にあるものも同じ思想だとおもいます。だからこそ、ShowcaseやAwardでは著名なクリエイターだけでなく、次に来るであろうクリエイターをフィーチャーしようとしているんです。Studioでは、クリエイティブな人たちが羽ばたくためのツールと環境を提供しています」


ブランドツールキットの開発
このブランドDNAは、ブランドツールキットの様々な要素に反映されている。
新しいロゴは、フラットデザインから3Dのデザインに進化した。
このロゴには3つのレイヤーがあると、石井は説明する。
石井 「一番下の層は私たち、つまりStudioです。クリエイターが表現できるベースとなる場所を提供するイメージですね。中間層は、クリエイターがエンパワーされ、どんなアイデアでも思い描けるような自由さ。最上層は、その結果生まれてくる最高の作品たちです。私たちはこの新しいビジュアルアイデンティティを、創造性を受け止めるための『器』と呼んでいます」
Studioのブランドカラーパレットは、よりモノクロ調に変化した。クリエイターの作品がフィーチャーされる際、ブランドではなく、作品が主役になるように、という思いが込められている。
石井 「私たちのアイデンティティは、クリエイターの作品なしでは完成しません」
最後に語られたのは、45度のビジュアルランゲージという概念だ。
石井 「創業当初から45度の角度のモチーフを使っていて、それは進歩とブレークスルーの象徴です」
アルバロ 「私たちは本当にこのモチーフに共感しています」
石井 「これは、これからのマーケティングにおいても主軸となるモチーフであり、私たちがずっと残していきたいものです」
このように定義された新しいロゴ、カラーパレット、ビジュアル言語は、常にStudioブランドの延長線上にあり、今まで語られてきた日本的美意識を体現している。

03 / 04
The journey:
Why this project was fun at 2AM
深夜2時であっても、最高に面白かったプロジェクト
石井とアルバロは今年3月にこのプロジェクトを開始。一連のワークショップを通じて、プロジェクトの方向性を定めるインサイトを得た。
ブランドの理解
アルバロ 「全てはブランド理解から始まりました。Studioの製品、デザイン、マーケティングの決定に影響を与えるものを深く掘り下げ、徐々に、日本的美意識が常にチームが難しい選択を迫られたときに立ち返る指針であったことに気づきました」
石井 「例えば、UIについて考えるとき、『Less is more』や引き算の美学といったものを直感的に選び取ってきたのです」
日本の美学を通して、彼らは抽象的なものを超えて深く考えるよう互いに押し進めた。最終的に、彼らは「間」「畳」「粋」という3つの柱で言語化してきた。これらの柱は常にStudioの思想に影響を与え続けるだろう。


競合の理解
アルバロ 「次に、Studioがたくさんの競合の中でどこに位置するかを理解する必要がありました」
アルバロ 「競合他社のメッセージやソーシャルメディアの投稿を分析することで、そのなかにあるパターンに気づきました。すべての競合他社は自分たち自身を発信することに多くの時間を費やしています。常に最新機能、プロモーション、または彼らの会社のメンバーが出演したポッドキャストについて発信しています。つまり、競合他社は「ブランド自身」に焦点を当てていたのです」
コミュニティの理解
アルバロ 「そして最後に、注意深く進めたのが、ユーザーを深く理解することでした」
アルバロ 「彼らはそれぞれ異なるものを求めていますが、一つの共通点があります。経験豊富なクリエイターも、クリエイターになろうとしている人も、創造性を解き放つことができる場所を求めていました。ユーザーは最高の自分になれるコミュニティを望んでいます。新しいツールをマーケティングされることは望んでいません」


インサイトから生まれたDNA
これらのインサイトを基に、二人はブランドDNAの草案を作成した。それはブランドの宣伝を辞め、ユーザーを称える方向にシフトするというものだった。
シリコンバレー流の自己主張的なブランディングから脱却し、日本のルーツに忠実な方法でブランドを構築していこうと考えたのだ。それは言い換えれば、幅広いユーザー層に響くユニークなストーリーを伝えること。つまり二人が最初に達成しようとしていたものだった。

アルバロ 「Joeと仕事をするのは最高の時間でした。彼はCEOであり、デザイナーでもあるからです。これは『for(〜のための)』関係ではなく、『with(〜と共に)』の関係そのものであり、お互いのパフォーマンスを最大限引き出しあえる関係性です」
アルバロは更に、サンフランシスコと東京という2つの異なるタイムゾーンにまたがって、Figma上でブランドDNAを他のデザインマテリアルに展開する作業を二人で行ったことについても説明した。
石井 「そうですね、アルバロと仕事をするのはとても楽しかったです。サンフランシスコでは、午前2時でしたけどね(笑)」


04 / 04
What’s Ahead:
It’s Always Day 1
毎日が「Day1」
この新しいツールキットは2024年10月1日に公開された。
石井 「しかし、ここで終わりではありません」
石井 「コミュニティが何を考えているか聞くのが待ち遠しいです。そして、このツールキットを彼らにとって意味のあるものに成長させていきたいです。毎日が1日目、つまりローンチの日なのです」
アルバロ 「そうですね、このブランドツールキットは、厳密なルールではなく、コミュニティが改善していくことのできるデザインモジュールとして構築されていますから」
さあ、あたらしいStudioブランドに参加しよう
石井「これからも、あなたの考えをチャットで教えてほしいと思っています。Studio で一緒にウェブデザインの未来を形づくることを楽しみにしています」
新しいStudioブランドは、Studioコミュニティの一員であるあなた、つまりクリエイターを中心に据えています。興味のある方は、ぜひ新しいStudioを体験してみてください。
EXPLORATION
カタチを変えて、採用されなかったアイデアたち





