SDA2023 Goodpatch賞受賞、園主の真摯な姿勢をグラフィカルなデザインで伝える「小川ぶどう園」コーポレートサイト
鈴木 智華
2024.04.23
Updated:2024.12.24

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大橋 絵里奈
クックドゥードゥードゥー
ノーコードWeb制作プラットフォーム「STUDIO」で制作されたWebサイトを讃えるWebデザインの祭典「STUDIO DESIGN AWARD2023(以下、SDA2023)」にて、愛知県小牧市のぶどう園「小川ぶどう園」WebサイトがGoodpatch賞を受賞しました。
独立からわずか1年という脅威のスピードでアワードを受賞したクックドゥードゥードゥー・大橋 絵里奈さんによると、受賞に至った背景にはとある人物の言葉があったそう。
自らの個性を武器にしたデザインを追求する彼女に、デザインする上で大切にしていることや受賞サイトの制作の裏側をお聞きしました。
学生時代から磨いてきたものづくりの感性を活かしてデザインを作る
──大橋さんはいつからデザインの道に進んだのでしょうか?
大橋:本格的に始めたのは学生時代からです。昔からものづくりが好きだったので名古屋造形大学に入学し、ジュエリーデザインコースでジュエリーのデザインや制作に取り組んでいました。新卒ではインテリア雑貨の企画会社にプロダクトデザイナーとして入社しました。
──それからなぜWebデザインに興味を持ったのでしょうか。
大橋:当時、プライベートで制作していた作品を紹介するWebサイトを作りたいと思ったのがきっかけでした。
コードを打ち込むと自分が意図したデザインがサイトに反映されることに感動して、「もっと専門的に学びたい」という気持ちが強まり、デザイン事務所に転職。そこでWebデザインやコーディングの経験を積み、2023年の4月に独立しました。

──STUDIOを使い始めた経緯も教えてください。
大橋:以前からSTUDIOの存在は知ってはいましたが、本格的に活用を検討するようになったのは独立の半年ほど前からです。とある大手IT企業のデザイナーがSTUDIOを使用していることを知り、「大企業も使っているデザインツールってどんなものだろう?」と興味を持ちました。
初めてSTUDIOを触ったとき「今まで大量のコードを書いて実装していた仕様が、こんなにも簡単な操作で実現できるのか!」と驚き、そこから本格的に操作方法を勉強し始めました。
独立してから制作したWebサイトは、ほとんどSTUDIOで作っています。
STUDIOなら小規模事業者でもコスト面を心配せずにWebサイトが作れる
──「小川ぶどう園」Webサイトを制作した経緯は?
大橋:「小川ぶどう園」を運営する園主さんが高校時代の部活の先輩で、オープン前に園の営業活動やWeb戦略について相談を受けたのがきっかけです。
はじめは「Webサイトは本当に必要なのか」「SNSだけで十分なのでは」とおっしゃっていたのですが、SNSは過去の情報が流れていくのでユーザーが情報を見つけにくいこと、Webサイトなら「園の特徴」「栽培品種」「販売時期」など、重要な情報に迷わずに辿り着けることをお伝えしました。
その上で小川ぶどう園の魅力やこだわりを整理した結果、「やはりWebサイトがあった方が良い」という結論に至り、制作のご依頼を受けることになりました。
──どのくらいの期間をかけて制作しましたか?
大橋:全体の工程を含めて3~4ヶ月ほどです。ブランディングや情報設計、写真の撮影、ロゴ制作も含めて全て自分一人で行っています。
制作時には何度も直売所を訪れて、園主さんに様々なことを伺いました。ときにはお客様対応や、ぶどうの栽培作業のお手伝いをしたことも。
現場で見た園主さんのぶどう栽培に対する真摯で繊細な姿勢を、どうしたらWebサイト上でも表現できるのか考えながら制作に取り組んでいました。

──サイトをSTUDIOで制作することに決めた理由を教えてください。
大橋:大きな理由は費用面です。
STUDIOはコードを書く必要がないため人件費を大きく抑えることができますし、フリープランを利用すればサーバーやドメイン費用も不要です。この点は小規模企業や店舗にとって大きなメリットだと思います。
またフリーのデザイナーである私にとっても、コーディングの時間を大幅に短縮してデザインのブラッシュアップに集中できる点がSTUDIOを活用する最大のメリットだと考えていました。
私自身、コーディングは学んでいたものの経験が浅く、描いたデザインを技術的な面で実現できるだろうかと不安に思うこともあります。
その点、STUDIOではコーディングの知識がなくても実装が可能なので、費用だけでなく時間面や精神面でコーディングの不安がないのもメリットに感じています。
園主の誠実な人柄をグラフィカルなデザインで表現
──サイトデザインのこだわりを教えてください。
大橋:小川ぶどう園で丁寧に作られたぶどうのこだわりや、他のぶどう園との違いを伝えるために、キービジュアルでブドウのアップをイメージしたイラストを背景に敷き、その上にぶどう園のロゴを重ねています。
──非常に印象に残るキービジュアルですよね。
大橋:他のぶどう園のサイトを閲覧したところキービジュアルに写真を使っているケースが多く、同じように写真で印象的なデザインにするのは難しいと感じました。一方でイラストはインパクトも強く、一目見ただけで鮮明に記憶に残りやすいのではないかと。
特に小川ぶどう園では、ぶどう一粒一粒に対して丁寧に向き合って作られているので、その丁寧さをイラストで表現したかったという背景もあります。

──大橋さんが特に気に入っているポイントも教えてください。
大橋:ツタが伸びていくアニメーションにぶどうの写真を組み合わせた、「品種紹介」のセクションが特に気に入っています。
数十種類の品種のぶどうを栽培しているぶどう農園も多いなか、小川ぶどう農園では厳選した5種類のみを栽培しています。数は少ないながらも、この5品種に全力で向き合っているのが小川ぶどう園さんの魅力。
それを伝えたいと思い、ゆっくりとツタが伸び、ぶどうの房がつく様をアニメーションで表現しました。じつはExpertsにも加盟されている株式会社スピッカートが以前作成された「女王のミルク」という飴のWebサイト内に、線が伸びてイラストが描かれていくアニメーションがあり、そのデザインにもインスピレーションを受けています。(※リニューアル前のサイト)
このデザインができたときは、我ながら「園主さんの実直な人柄をうまく表現できたな」と思っちゃいましたね。

──サイト公開後の反響はどうでしたか?
大橋:公開後に地元の情報を配信するアカウントやYahoo!ニュースに取り上げられ、多くの方にサイトへ訪れていただきました。また直売所には列ができ、予定よりも半月以上早く売り切れたと聞いています。
──素晴らしいですね…! 同じくSDA2023でノミネートされた「Studio Mora Mora」サイトもSNSの反響が大きかった印象でした。
大橋:ありがとうございます。「Studio Mora Mora」は私の兄が運営するバイオリン工房のWebサイトなのですが、リリースした数日後に、株式会社エノンのニシカイチさんがSNSで取り上げてくれたことがきっかけで目に留めてくださった方が一気に増えたんです。

そのおかげで他の工房からも仕事の依頼が来たり、Webのギャラリーサイトや書籍にも掲載いただいたりと反響がたくさんありました。特に、株式会社neccoの佐藤あゆみさんが執筆された本※に載せていただいたのが嬉しかったですね。
※書籍『ノーコードでつくるWebサイト ツール選定・デザイン・制作・運用が全部わかる!』 / 佐藤あゆみ (著)
グラフィカルなデザインの強みを活かしつつ、表現の幅を広げたい
──大橋さんが作られるサイトはグラフィカルな表現が印象的ですが、デザイナーとしての方向性を確立したきっかけはあったのでしょうか。
大橋:じつは、独立したばかりの頃は自分の特色であるグラフィカルな表現を前面に押し出すべきか、クライアントの求めるデザインを忠実に再現するべきか、仕事のスタイルを迷っていたんです。
当時は「自分を出したらそれはデザインではなくアート」「どんなデザインにも対応できるのが本当のデザイナー」という考えもあったので、自分の色を出さないようにしていました。でも心のどこかで「自分が介在する意味はあるのだろうか」と疑問に思うこともあり……。

そんなときにNEWTOWNの犬飼さんにたまたまお会いして、悩みを相談したところ「自分の色を出した方が良い。大橋さんにしかできないことをやろう」と励ましてくれたんです。尊敬するデザイナーである犬飼さんの言葉を信じて、もっと自分の得意分野を出したデザインに挑戦してみようと決心できました。
別れ際に「次お会いするときはSDAの授賞式で!」と声をかけていただき、そこからSDAへ向けて頑張ろうとモチベーションが高まりました。今回このような賞を受賞できたのも、犬飼さんからいただいた言葉があったからだと思います。
──改めて、Webサイト制作でSTUDIOを活用するメリットを教えてください。
大橋:自分のコーディング技術の制約を考えずに、自由にデザインが組めるようになることです。
STUDIOを活用せず、自分一人でデザインとコーディングを行なっていたときは「このデザインだとコーディングが面倒だから、もっと簡単なデザインにしよう」と自分でデザインの幅を狭めてしまっていました。
しかしSTUDIOを使い始めてからは、そういった思考が一切なくなり、自分がベストだと思うものを作れるようになりました。
──今後Expertsとして挑戦したいことはありますか?
大橋:表現の幅を広げたいですね。多くの方からグラフィカルなデザインを評価していただいているので、その部分をさらに強化しつつ、さらに多様なデザインを提供できるようになりたいです。
独立からわずか1年、デザイナーとしての方向性を模索した時期を乗り越え、受賞へと至った大橋さん。絵本の世界に引き込まれていくような、心が高鳴るデザインに惹かれた人も多かったのではないでしょうか。生粋のものづくり好きで、インタビューでは「趣味みたいにデザインをしている」とお話ししていたことも印象的でした。
グラフィカルな表現を得意とする大橋さんと一緒に、唯一無二のサイトを作りたいと考えている方はぜひこちらからご相談ください。
