株式会社フレミングが制作した「INCLUSIVE CAMP」のサイトが、Studioで作られたWebサイトを讃えるWebデザインの祭典「STUDIO DESIGN AWARD2023(以下、SDA2023)」にノミネートされました。ハードルの高い「医療的ケア児のキャンプ体験」についてコツや体験者の声を掲載し、冒険への最初の一歩をサポートする本サイト。クラウドファンディングからスタートしたプロジェクトのコンセプトや意義を多くの人に体感してもらうべく「情報設計やデザインの細部にまで工夫を凝らした」と言います。今回はプロジェクトのパンフレット作成からサイトリリースに携わった株式会社フレミングの天野さん・石川さんのお二人に、制作のプロセスとこだわりを聞きました。医療的ケア児とその家族がキャンプを楽しめる「INCLUSIVE CAMP」──今回サイト制作を担当された「INCLUSIVE CAMP」プロジェクトについて簡単に教えてください。天野:「INCLUSIVE CAMP」は、医療的ケアが必要な子どもとその家族に豊かなアウトドアの体験機会を提供するプロジェクトです。医療的ケア児のデイサービス事業を行う一般社団法人Buranoが主催団体として取り組んでいます。今回はパンフレット、Webサイトともにアウトドア体験のハードルが高い子どもたちと家族にも自然を体感してもらうため、準備やケアに関する情報、実際にキャンプを体験した家族の声を掲載しています。──「INCLUSIVE CAMP」のWebサイト制作でStudioを採用した背景は?石川:今回のプロジェクトがクラウドファンディングから始まったのでリターンとしてお渡しするパンフレットの制作は決まっていたのですが、Webサイト制作にはあまりコストをかけない想定だったんです。ただ「INCLUSIVE CAMP」は社会的な意義の高いプロジェクトであり、私たちも全力で応援したいと考えていました。そこで開発の部分はコストを抑えつつ多様な機能やデザインを実現できるStudioの導入を提案し、サイト自体はWebならではのコンテンツを拡充、活動の軸となるプラットフォームを目指しました。▲「INCLUSIVE CAMP」プロジェクトのクラウドファンディングページStudio CMS機能をフル活用、プロジェクトの意義を世の中に広めるプラットフォームへ──制作はどのような流れで進んだのでしょうか? プロセスやこだわりのポイントを教えてください。天野:まず私が全体のトーン&マナー設計とパンフレットのデザインを行い、石川さんにはパンフレットの情報をWebサイトのデザインに落とし込んでもらう作業をやってもらいました。パンフレットは今回のプロジェクトの協業企業であるスノーピークの店舗にも置かれる想定だったので、少しでも多くの人がこの取り組みを理解して興味を持ってもらえるように、単なる「おしゃれなキャンパー向け雑誌」とは一味違うデザインにしたいと考えていましたね。「すべての子どもたちに野遊びを。」という「INCLUSIVE CAMP」コンセプトは、スノーピークのコピーである「人生に、野遊びを。」とつながる形で作りました。色使いはこのコンセプトを反映しつつ、「キャンプの楽しさ」と「プロジェクトの意義・安心感」の二つが伝わるように、ポップになりすぎない中間色4色を選定しています。▲「INCLUSIVE CAMP」パンフレット内の「準備編」ページまたStudioでサイトを構築することが決まっていたため、Studio上で使えるものであり、かつ「C」の文字が閉じずに開いている印象を受けたKumbh Sansを採用しています。石川:Webサイト制作では、より広いターゲットの方々に対してアプローチできるようパンフレットの構成を分解し、Webならではの表現やユーザー体験を取り入れて構成の再設計を行いました。またWebならではの機能としてStudioのCMS機能を最大限に活用し、キャンプ参加者の声(Voice)をどんどん更新・発信できるようにしています。▲「INCLUSIVE CAMP」サイト内の「VOICE」セクション「楽しさ」と「安心感」を想起させるデザインで、冒険への最初の一歩をサポート──デザインする際、特にこだわった点を教えてください。石川:パンフレットではあまり使われていなかった、角丸の枠やトリミングのデザインをランダムに用いています。「楽しさ」と「安心感」、「柔らかさ」と「真面目さ」という相反するイメージを表現するためには、すべて角丸でも、全て四角でもマッチしないと思ったのです。様々なパターンを試した結果、部分的に角丸を使うこのデザインを採用しました。「ハンディキャップを持っている人たちも、キャンプを当たり前に楽しめるように」という「INCLUSIVE CAMP」のコンセプトと、困難な課題にしっかりと向き合う彼らの姿勢を反映できたのではないかと思います。──レイアウトやモーションも、ゆったりとした優しいイメージを彷彿とさせますね。石川:レイアウトは規則正しく並べすぎず、各要素を少しずらして配置することで、柔らかさと動きのあるデザインにしました。またカルーセルの動きやハンバーガーメニューのホバーモーションも、自然を感じさせるような気持ちの良いリズム感を目指して、動く速度や秒数をかなり細かくチューニングしています。──細部までこだわっていることが伝わります。サイト公開後の反響はいかがでしたか?天野:Webサイトがきっかけで、あるポータブル電源メーカーとのコラボレーションが実現しました。また他の団体からも「参考にしたい」「外遊びへの抵抗感がなくなった」という声が寄せられるなど「INCLUSIVE CAMP」の取り組みが広く認知されるようになったと聞いています。▲Webデザインギャラリー「S5-Style」にも掲載Studioを活用することで、本質的な価値提供に注力できるようになった──Studioを活用し始めたきっかけは何だったのでしょうか。石川:Studioを知ったきっかけは、NEWTOWNさんが制作された「鯛のないたい焼き屋 OYOGE」のWebサイトです。初めて見たときにノーコードとは思えないクオリティに感動し、本格的に活用を始めました。──改めて、制作会社がStudioを活用するメリットはどこにあると思いますか?石川:フレミングにはエンジニアが在籍しておらず、デザイナー2人とリソースが限られているため、Studioを導入すればコーディング不要でデザインから実装まで完結できる点は大きなメリットです。エンジニアへの外注時に発生する時間やディレクションの工数を削減できるので、デザインやクライアントとのコミュニケーションなどの本質的な価値提供に注力できるようになりました。──フレミングがデザインをする上で大切にしている価値観も教えてください。天野:デザインは未来への投資だと考えています。「その事業や商品、サービスが社会にとって良いものであり、次の時代に残せるものか」という観点から、クライアントの理念に共感し「良いな」と思うプロジェクトに積極的に関わっていきたいです。石川:私も天野と同じスタンスです。クライアントの要望をただ受け入れるだけでなく、疑問や懸念があればしっかりと意見を伝え、より良い方向に進むための提案をすることを大切にしています。──最後に、今後の展望をお願いします。天野:業種や規模に関係なく、共感できるビジョンを持つ企業と出会い、一緒に成長していける関係を築きたいです。予算が限られているスタートアップやスモールビジネス企業に対しても、Studioを活用することで高品質なデザインを実現し、企業の成長をサポートできればと考えています。石川:私も天野も、過去に採用広報支援におけるパンフレットや採用サイトの制作で関わることが多かったため、今後も採用広報やコーポレートブランディングは強化していきたいです。近年は会社の社会的な価値を伝えるのみならず、優秀な人材を惹きつけるという観点からも、コーポレートブランディングの必要性を感じる企業が増えていると感じます。現場で働く人の声を拾い上げ、その会社の魅力を伝える取り組みをサポートできれば嬉しいです。社会的意義の高いプロジェクトや事業を多くの人に伝えたいと考える一方、Webサイトの制作コストがネックになってしまうケースは多々あるもの。その解決手段にStudioが選ばれたことは、本質的な価値提供に寄与したいと考えるStudioの展望とも重なります。「デザインは未来への投資」だと考えているからこそ、クライアントとの関係値づくりや価値観の共有を大切にするフレミング。Webサイトのみならず、ロゴやブランドブックの制作などブランド構築における一貫したデザイン制作を依頼したい方はぜひご相談ください。▲株式会社フレミングのStudio制作事例