Studio Store 売上1位のデザイナーに聞くテンプレート制作・販売のコツ|Studio Talk vol.5
鈴木 智華
2024.11.25
Updated:2024.11.26
Studioのデザインテンプレートを売買できるマーケットプレイスとして、2023年にリリースした「Studio Store」。今回は「Studio Storeでテンプレートを出品するための制作ノウハウ」をテーマに開催したイベントの様子をお届けします。

Profile
溝口 耕太
株式会社アイティプラス アートディレクター/デザイナー
外部プロフィール
Studioのデザインテンプレートを売買できるマーケットプレイスとして、2023年にリリースした「Studio Store」。
累計テンプレート売買件数は7,000件以上(2024年11月時点)、1ヶ月で50件以上テンプレートを売り上げるクリエイターが登場するなど、Studioでのサイト制作経験のあるデザイナーが新たな収益源を得られるプラットフォームへと成長しつつあります。
今回は「Studio Storeでテンプレートを出品するための制作ノウハウ」をテーマに開催したイベントの様子をお届けします。
運営メンバーによる「Studio Store」の概要とともに、有料テンプレートランキング1位を誇るアイティプラス社のテンプレートデザイナー・溝口さんによる「売れる」テンプレートを作るコツをご紹介します。
※当日のアーカイブ動画は「Studio Community」にて視聴いただけます。
Studioの表現を追求しながら、新たな収益を得られるマーケットプレイス

「Studio Store(以下、Store)」はStudioによる審査を通過した「テンプレートデザイナー」がテンプレートを販売しており、また出品前のテンプレートに対しても審査を行うなど、2段階の審査によって品質を担保しているのが大きな特徴です。
ユーザーはこれらの高品質なテンプレートを購入することで、Webサイトを自分の手でスピーディーに制作できます。
「デザイナーがテンプレートを出品するメリットは大きく3つ。
一度の制作で継続的な収入を得られる
副業デザイナーの方や制作会社様の新たな収入の軸となる
ポートフォリオとしてデザインスキルをアピールするチャンスとなる
という点です。デザイナーとしてのキャリアを広げたい方にとって、Storeは収益を得ながら自己表現をする場としてご利用いただけます」(川上)
現在Storeで活躍しているテンプレートデザイナーは、会社の一事業としてテンプレート販売を行っている人から、副業でテンプレートを作っている人までざまざまとのこと。
「Storeの応募フォームからポートフォリオサイト、Studioで制作したサイトのURLなどを提出することで、テンプレートデザイナーの審査を受けられます。今後もさらにテンプレートの数や商品カテゴリーを充実させていきたいと考えていますので、興味のある方はぜひご応募いただき、ともにStoreを盛り上げていければ嬉しいです」(川上)
「売れる」テンプレートは「ジャンル」「構成」「トーン」が肝

続いて、テンプレートデザイナーでありStudio Expertsにも加盟しているアイティプラス社の溝口さんがゲスト講師として登場。有料テンプレートランキングで1位を獲得している「THEマーケティングカンパニー」の事例をもとに、テンプレートの制作・出品ノウハウを解説いただきました。
「弊社はこれまで3つのテンプレートを制作・販売してきました。最初は月に数件ほどの売上でしたが、マーケティング会社向けのテンプレート『THEマーケティングカンパニー』の出品以降は、ありがたいことにコンスタントに購入いただいています。ただし、私たちが参入したのはStoreの立ち上がり当初だったため、多くのテンプレートデザイナーさんが活躍されている現在とは少し状況が違うかもしれません」(溝口さん)
「売れる」テンプレートを制作する方法について、溝口さんは「①サイトのジャンル、②サイト構成、③デザインのトーン。これら3つについてターゲットのニーズを抑えるのがポイント」と語ります。
「①サイトのジャンルについては、マーケットが十分に大きく、自分の過去の実績が活かせるジャンルを選びましょう。例えばStoreのランキングを見てみると、ビジネス系のテンプレートが上位に来ており、コーポレートサイトやサービスのLPの需要が高いことが窺えます。
弊社はこれまでBtoB企業の案件に多く携わってきたため、これまで蓄積してきた知見を盛り込めるという観点からも、ビジネス系のテンプレートは相性がいいと感じました。
とはいえ、Storeにはさまざまなクリエイターが参入しているので、その中で埋もれないためにも、独自の価値を伝えることが重要です。例えば『THEマーケティングカンパニー』は、企業の中でもあえてマーケティング会社向けにターゲットを絞り込み、より堅めの雰囲気を伝えたい購入者へ訴求しました」(溝口さん)
そして②サイト構成を考えるフェーズでは、ターゲットとなる会社のニーズを詳細にイメージした上で、求められるサイト構成や必要なコンテンツを洗い出しを行います。
「THEマーケティングカンパニー」の作成時は、利用する会社の業種や設立年数、企業規模、テンプレートを選定する人のポジションまでイメージし、テキスト情報に落とし込んだそう。
「実際の案件とテンプレートの最大の違いは、クライアントの存在の有無。クライアントと対話を重ねて要件を決めることができないからこそ、掲載すべき情報を突き詰めて考える想像力が求められます。その想定の精度が高まるほど、ターゲットに刺さりやすいものになるはずです。
このテンプレートでは、マーケティングやコンサルティングといったBtoBの無形商材を扱う立ち上げ期の会社を想定して作成しました。そのため、会社情報や事業内容などのコーポレートサイトとして必要な情報を掲載しつつ、この会社のサイトを訪問したお客様が気になるであろう『実績』のコンテンツを充実させたサイト構成になっています」(溝口さん)
さらに③デザインのトーンに関しては「想定している購入者に好かれるであろうトーンに落とし込むバランス感覚が求められる」とコメント。
「もちろん、その業種で好まれる一般的なトーンを踏襲したほうがベターではありますが、差別化を図るためにある程度デザイン性を持たせる必要もあります。
しかしあまりにも尖りすぎると、万人には使いにくいテンプレートになってしまう。使いやすさや好ましさと、デザイン性をいかに両立するか。悩ましいポイントではありますが、この点が『売れる』テンプレートを作るキモだと考えています」(溝口さん)
品質管理や購入者サポートへの真摯な対応が「売れる」テンプレート作りの第一歩
テンプレートデザイナーの初心者がStudio Storeにテンプレートの出品申請をする際の注意点として、審査で見られるチェック項目があります。溝口さんが実際に行っているチェック方法とともに、審査を通過するためのポイントを紹介いただきました。
「テンプレートデザイナーに登録すると、審査項目が記載されたチェックガイドが配布されます。ガイドにはレスポンシブ対応やアクセシビリティ対応、適切なレイヤー構造になっているかなど30ほどの項目があり、これらをクリアするのに最初は苦労しました。
今でも申請前には必ず、地道にStudioエディターを確認したり、Googleが提供している拡張機能『Lighthouse』などのWebアクセシビリティチェックツールを使ったりして、必要な設定を行います。大変ではありますが、Webサイトの品質を保つために重要なポイントでもあるので、気を抜かずに対応しましょう」(溝口さん)
また、テンプレート出品で見落としがちなのが購入後のサポート。溝口さんは購入者向けのサポートとして、テンプレートの具体的な編集方法を記載した「テンプレート変更ガイド」を作成していると言います。

「テンプレート変更ガイド」では初めてStudioを使う人でも迷わず編集できるよう、ロゴや装飾など各要素のほか、リスト・CMSの仕様について『どのように操作すれば変えられるのか』という手順がまとめられています。」
「購入者も自走しやすくなるし、問い合わせ対応も減らせるので、事前にガイドを作るのは非常におすすめ」と溝口さん。ユーザーの困りごとを先回りして解決するホスピタリティに、参加者から称賛の声が寄せられました。
Studio Storeに関する質疑応答
セッションでは、テンプレートデザイナーへの応募を検討するクリエイターからの質疑応答を実施。具体的な出品・制作ノウハウを学ぶとともに、Studio Storeへの理解を深める時間となりました。
Q. テンプレートデザイナーの視点から、販売目的以外にテンプレート制作のメリットは何ですか?
「1つはチェックガイドへの対応を通じて、Studioの正しい実装方法を学べること。もう1つは、テンプレートをきっかけにより多くの人に認知いただけるようになったこと。後者については、今回のようなイベント登壇のご依頼や、テンプレートをきっかけに案件のお問い合わせも増えるなど、間接的なメリットも多いと感じています」(溝口さん)
Q. テンプレートの実装で気をつけていることはありますか?
「購入者のデザインリテラシーや、編集しやすさを考慮して実装しています。具体的には、画像ボックスはBoxモードにしてトリミングなしでもデザインが崩れないようにしたり、会社の成長や事業転換にともなって項目が増えそうな場所は積極的にリストを使ったりしています」(溝口さん)
Q. テンプレート作成にかかる工数はどのくらいですか?
「工数・期間は人それぞれだと思いますが、最初のコンセプト設計が固まれば、あとは案件と並行しながら、平均1~2週間で作成しています。実際の案件と比較するとクライアントとのやり取りがない分、期間が圧縮されているイメージです」(溝口さん)
Q. Studioのアクセシビリティの基準について教えてください。
「Studioのテンプレートチェックリストには、国際標準のアクセシビリティ基準である、WCAG 2.1のレベルAおよびAAを参照した構築方法を盛り込んでいます。WCAGの各基準に基づく対応方法につきましては、Studioアクセシビリティチェックシートをご覧ください。」(川上)
Studioアクセシビリティチェックシート|Studio Help
Q. テンプレートデザイナーになるための応募条件を詳しく教えてください。
「Studioのアカウントを持っていらっしゃることと、これまでに制作いただいたStudioのサイトをご提出いただけることが主な条件です。法人・個人問わず、また利用中のプランも関係なくご応募いただけます」(川上)
Q. Studioの販売手数料はいくらですか?
「有料テンプレート販売における手数料率は、月の売上に対して20%となっております」(川上)
Q. 公開後もテンプレートの更新は可能ですか?
「可能です。ただし更新時に審査が必要な場合と、不要な場合があります」(川上)
最後に
売上1位のテンプレートデザイナーをゲストに迎え、テンプレート制作・出品のリアルが語られた本イベント。溝口さんによる実践的なヒントを聞く中で、実際に出品するイメージが湧いたという人も多いのではないでしょうか。
本レポートを通じて「自分もテンプレートデザイナーに挑戦してみたい」と思った方は、下記のリンクからご応募ください。
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