LP外注をやめて内製化する方法。手順・コスト・リスクを事例から解説
村上 悠希
2026.03.30
Updated:2026.03.30
LP制作を外注し続ける最大のリスクは、費用ではありません。改善が止まることです。 修正のたびに見積もり→決裁→外注先へ依頼という流れが発生すると、テキスト1行の変更にも数日〜数週間かかります。「修正にお金がかかるから、今のままでいい」という判断が常態化し、LPの改善サイクルそのものが回らなくなります。
村上 悠希
2026.03.30
Updated:2026.03.30
LP制作を外注し続ける最大のリスクは、費用ではありません。改善が止まることです。 修正のたびに見積もり→決裁→外注先へ依頼という流れが発生すると、テキスト1行の変更にも数日〜数週間かかります。「修正にお金がかかるから、今のままでいい」という判断が常態化し、LPの改善サイクルそのものが回らなくなります。
LP制作を外注し続ける最大のリスクは、費用ではありません。改善が止まることです。
修正のたびに見積もり→決裁→外注先へ依頼という流れが発生すると、テキスト1行の変更にも数日〜数週間かかります。「修正にお金がかかるから、今のままでいい」という判断が常態化し、LPの改善サイクルそのものが回らなくなります。
丸井グループでは、月平均6件のLP制作を外注から内製化した結果、制作期間を44日から約20日に短縮(52%短縮)し、コストを外注比で約80%削減しました。東急では、サイト更新にかかる期間が1〜2ヶ月から1〜2日に変わっています。
ただし、すべての企業に内製化が最適とは限りません。年に数件しかLPを作らない企業や、公開後の改善をほぼ行わない場合は、外注のほうが合理的です。
以下では、外注と内製の構造的な違い、判断の基準、具体的な移行手順をまとめました。自社の状況と照らし合わせて、判断の参考としてご活用ください。
外注のコストと聞くと、制作費や修正費を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、見積書に載らないコストのほうが影響は大きい場合があります。
LP制作の外注費は、依頼先によって以下のように幅があります。
依頼先 | 費用目安 | 対応範囲 |
|---|---|---|
フリーランス | 10〜50万円 | デザイン・コーディングが中心 |
制作会社(中小) | 50〜100万円 | 企画・デザイン・コーディング |
制作会社(戦略込み) | 100〜300万円 | 戦略設計・ディレクション含む |
費用の幅が出る最大の理由は「どこまで依頼するか」です。デザインとコーディングだけなら費用は抑えられますが、構成案の設計やディレクション込みで依頼すると大きく上がります。
コミュニケーションコスト:修正依頼のたびに、指示書の作成・確認・フィードバックの往復が発生します。1回の修正に数日かかることも珍しくありません。
待ち時間:制作会社のスケジュールに依存するため、依頼から公開まで1〜2ヶ月、長い場合は半年かかるのが一般的です。
継続改善が止まるコスト:公開後にABテストやデザイン修正を行いたい場合、そのたびに追加の見積もりと外注費が発生します。結果として改善を先送りにする判断が常態化し、LPの成果が頭打ちになります。これが外注の最大のリスクです。 制作費よりも、改善が回らないことによる機会損失のほうが長期的には大きくなります。
丸井グループでは、月平均6件のIPコラボカードLPをすべて外注しており、券面ごとに外注費が発生していました。軽微な修正にも工数とコストがかかり、柔軟な対応が難しい状態だったといいます。営業チームがLPラフ案をExcelで作成する工程にも1〜1.5営業日/件を費やしており、制作部門以外にも工数が波及していました。
東急でも、テキスト修正を含むすべての更新を制作会社に外注しており、些細な修正でも資料作成→電話フォロー→見積もり取得→社内決裁→外注制作→公開という流れを経て、1〜2ヶ月の期間が発生していました。更新の手間から情報のつぎはぎが常態化し、サイト全体のデザインの一貫性が崩れていたといいます。
外注にも内製にもそれぞれ強みがあります。どちらが自社に合うかは、コストだけでなく運用面の違いも含めて判断する必要があります。
比較軸 | 外注 | 内製 |
|---|---|---|
費用構造 | 1件ごとに変動費が発生 | ツール月額費用(固定費) |
LP1件の制作費 | 10〜300万円(依頼範囲で変動) | 固定費に含まれる |
制作期間 | 1〜2ヶ月 | 数日〜2週間 |
修正費用 | 修正のたびに発生 | 追加費用なし |
丸井グループでは、外注比でコスト約80%削減を実現しています。月平均6件という制作頻度だからこそ、内製化への切り替えが大きな効果を生んでいます。
比較軸 | 外注 | 内製 |
|---|---|---|
改善頻度 | 低い(費用が障壁になる) | 高い(修正コストがほぼゼロ) |
ノウハウの蓄積先 | 外注先に蓄積 | 自社に蓄積 |
属人化リスク | 外注先の担当者に依存 | 社内で分散可能 |
件数増加時の対応 | コストが比例して増加 | コストは一定、リソースは増加 |
ガバナンス | 外注先の管理体制に依存 | 自社でコントロール可能 |
東急では、外注時には修正指示や見積もりなど、多くの手間がかかっていました。内製化後は「担当者が編集→社内確認→公開」に集約されています。社内確認さえ取れれば公開が完了する状態に変わりました。
ただし、内製化にも注意点があります。初期の学習コストは避けられません。デザインの品質はツールの選定と運用設計に左右されます。「ツールを導入すれば自動的にうまくいく」わけではなく、共通パーツの設計や運用ルールの整備に工夫が必要です。
比較表だけでは「自社はどちらか」を判断しにくいため、ケース別の結論を明確にします。
以下に2つ以上当てはまるなら、内製化を急ぐ必要はありません。
LP制作が年に1,2件程度:制作頻度が低い場合、ツール導入の固定費が割高になります。外注の変動費モデルのほうがコスト効率がよいケースです
公開後の修正・改善をほとんど行わない:LPを一度作って長期間そのまま使う運用なら、外注のデメリット(改善が止まる)が表面化しにくくなります
ブランドの初期設計や大型リニューアルが中心:ブランドコンセプトの策定やビジュアルの方向性決定は、プロの知見が求められます
以下に2つ以上当てはまるなら、内製化の投資対効果が見込めます。
月に1件以上のLP制作がある:丸井グループのように月6件のLP制作がある組織では、外注体制の変動費が積み上がり続けます
公開後に月1回以上の更新・改善を行いたい:改善のたびに外注費が発生する構造は、仮説検証を回す障壁になります
担当者が1名以上配置できる:ツール操作の習得は1〜2週間で可能ですが、施策の判断ができる人が社内にいることが前提です
複数部門でLPやWebサイトを運用している:グループ全体でWeb基盤を一元管理する構想がある場合、内製化は長期的な投資として機能します
2社の実例をご紹介します。
丸井グループの子会社であるマルイユナイトでは、エポスカードのIPコラボカード新券面LP制作を外注から内製化しました。
指標 | 外注時 | 内製化後 |
|---|---|---|
LP制作期間 | 平均44日 | 約20日(52%短縮) |
制作コスト | 券面ごとに外注費が発生 | 外注比で約80%削減 |
営業チーム工数 | ラフ案作成に1〜1.5営業日/件 | 作業を丸ごと削減 |
制作の担い手 | 外注先のみ | デザイナーでない担当者でも約3時間で完成 |
注目すべきは、制作部門だけでなく営業チームの工数まで削減されている点です。ツール導入をきっかけに制作プロセス全体を見直したことで、想定していなかった効果が出ています。コンポーネント機能で金融特有の注釈・注意書きを一元管理し、変更可能な範囲を制限することで、更新効率とガバナンスを両立しました。
内製化後はABテストやヒートマップの導入を検討できるフェーズに移行しています。外注時代には「改善のたびにお金がかかる」ため先送りしていた施策に着手できるようになったことが、本質的な変化です。
東急株式会社では、新卒採用サイトの制作・運用体制を外注から内製に切り替えました。DX推進の内製開発組織「URBAN HACKS」が推進するグループ全体のWeb基盤一元管理プロジェクトの一環です。
指標 | 外注時 | 内製化後 |
|---|---|---|
更新にかかる期間 | 1〜2ヶ月 | 1〜2日 |
更新の流れ | 資料作成→電話→見積もり→決裁→外注→公開 | 担当者が編集→社内確認→公開 |
修正の都度コスト | 見積もり・決裁・外注費が毎回発生 | 不要に |
運用の担い手 | 制作会社 | Web知識のない採用担当者でも操作可能 |
運用担当者が変わってもサイトが崩れない設計を徹底し、浮いたリソースは学生への訴求を強化する企画・施策に再配分されています。
実務レベルの移行手順を5ステップで整理します。
内製化を検討する前に、「外注を続けた場合の半年分のコスト」を計算します。
LP1件あたりの外注費(企画込みか、制作のみか)
発注から公開までにかかる日数
月間の修正依頼回数と1回あたりの追加費用
営業やマーケ担当者が制作会社とのやりとりに費やしている時間
制作部門以外の工数も含めて試算することで、より実態に近い判断ができます。
すべてを一気に内製化する必要はありません。段階を分けて考えるのが現実的です。
段階 | 外注する範囲 | 内製する範囲 |
|---|---|---|
初期 | デザイン+初期構築 | テキスト更新・軽微な修正 |
中期 | ブランド設計・大型案件 | 定型LPの制作・改善全般 |
成熟期 | 特殊案件のみ | ほぼすべてのLP制作 |
東急では、初期構築を制作パートナーに依頼し「崩れにくい設計」を作った上で、運用フェーズから内製に切り替えています。内製化は「外注をゼロにすること」ではなく、初期構築はプロに任せ、運用から自走に切り替えるアプローチが現実的です。
ノーコードLP制作ツールの選定では、以下の3点が実務上の分岐点です。
操作性:非エンジニア・非デザイナーが、習得後に1ページを数時間で完成できるかどうか。学習コストだけでなく、習得後の制作速度で比較することが重要です。
セキュリティ要件:大手企業や金融・教育などの規制業界では、監査ログやアクセス権限管理を備えた法人向けプランがあるかが選定の前提条件になります。機能比較の前に、この要件を確認するのが実態に即した選定の流れです。
日本語サポート:社内展開時に英語ドキュメントだけでは浸透が進みにくいケースがあります。複数の導入企業でも、日本語サポートの有無がツール選定の決め手になっている傾向が見られます。
注意点として、CMS記事だけ更新できても、デザイン修正に外注が残れば運用コストは十分に下がりません。「デザイン領域まで非エンジニアが編集できるか」が、内製化の効果を左右する分岐点です。LP制作ツールの比較と選定基準をまとめた記事も選定時の参考になります。
いきなり全LPを内製化するのではなく、まず1つのLP・1つのサイトで試験運用を行います。
制作頻度が高く、裁量が大きいLPを選ぶ
担当者がツールに慣れるまでの学習期間(1〜2週間)を見込む
試験運用の結果をもとに、コスト・工数・品質を定量で評価する
試験運用で効果が確認できたら、量産体制の仕組みを整えます。
共通パーツの設計:ヘッダー・CTA・注釈などをコンポーネント化し、新しいLPを作るときにパーツを配置するだけで完成する状態にします。
丸井グループでは、コンポーネント機能で金融特有の注釈・注意書きを一元管理し、変更可能な範囲を制限しています。デザインの自由度を保ちながら、事故のない運用を設計しています。
運用ルールの整備:誰がどの範囲を編集できるか、公開前のチェック体制はどうするかを明文化します。担当者が変わっても品質が維持される体制を作ることが、内製化を持続させる条件です。
内製化がうまくいかないケースも存在します。楽観的に進めて後から苦労しないよう、よくある失敗パターンを把握しておくことが重要です。
ツールを導入してすぐにLPを作り始めると、共通パーツが整備されないまま個別対応が積み重なります。更新のたびにゼロから作業が発生し、外注時代と工数が変わらないという事態になりかねません。
初期構築を制作パートナーに依頼し、共通パーツの設計やマニュアル整備を「運用開始前」に完了させることが重要です。この初期投資を省略すると、運用フェーズで効率が大きく落ちます。
ツールを契約しただけでは、制作体制は変わりません。操作の習得、公開前のチェック体制、共通パーツの運用ルールなど、ツールの外側にある仕組みづくりが内製化の実体です。
ツールの機能と社内の業務の流れを接続する設計がなければ、ツールだけが導入されて運用は変わらない状態に陥ります。
内製化の範囲を一度に広げすぎると、担当者の負荷が急増し、品質の低下やスケジュール遅延が発生します。
まず1つのLP・1つのサイトで実績を作り、段階的に範囲を広げる。小さく始めて、効果を確認してから広げる。この順序を守ることが、内製化を持続させる条件です。
LP内製化で変わるのはコストだけではありません。制作にかかる期間が短縮されることで改善の頻度が上がり、その積み重ねがLPの成果を左右します。複数の導入企業を横断して見ると、ツール導入後に最も変化しているのはコストではなく施策の実行速度です。更新速度の向上が改善サイクルの高速化につながる傾向が見られます。
まずは、自社の現在のLP制作コスト・制作期間・修正頻度を数字で把握するところから始めてみてください。「外注のままだと半年後にいくらかかるか」を計算するだけでも、内製化を検討すべきかどうかの判断材料になります。
広告代理店・SaaS企業を経て、現在はStudioでマーケティングを管掌。
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