コーポレートサイトリニューアルを任されたら|社内合意・要件整理・移行の手順
村上 悠希
2026.07.03
Updated:2026.07.02
コーポレートサイトのリニューアルを担当することになった場合、何から手をつければよいか迷う方は少なくありません。外注先の選定や制作費の調達より先に、社内での目的合意と要件整理を終わらせておく必要があります。 担当者が最初にすべきことから、社内合意の形成・要件整理・移行作業・公開後の運用設計まで、プロジェクトの流れをフェーズごとにまとめました。

村上 悠希
2026.07.03
Updated:2026.07.02
コーポレートサイトのリニューアルを担当することになった場合、何から手をつければよいか迷う方は少なくありません。外注先の選定や制作費の調達より先に、社内での目的合意と要件整理を終わらせておく必要があります。 担当者が最初にすべきことから、社内合意の形成・要件整理・移行作業・公開後の運用設計まで、プロジェクトの流れをフェーズごとにまとめました。

コーポレートサイトのリニューアルを担当することになった場合、何から手をつければよいか迷う方は少なくありません。外注先の選定や制作費の調達より先に、社内での目的合意と要件整理を終わらせておく必要があります。
担当者が最初にすべきことから、社内合意の形成・要件整理・移行作業・公開後の運用設計まで、プロジェクトの流れをフェーズごとにまとめました。
リニューアルプロジェクトは大きく5つのフェーズで進みます。
目的の言語化と社内合意:なぜリニューアルするかを関係者と合意する
要件整理と現状分析:機能・デザイン・コンテンツ・技術の要件を整理する
制作フェーズ:内製または外注で制作を進める
移行作業:旧サイトから新サイトへ安全に切り替える
公開後の運用設計:更新フローと効果測定の体制を整える
このうち最初の2フェーズ(社内合意と要件整理)に十分な時間をかけることが、後工程のやり直しを防ぐうえで重要です。制作に入ってから「やはり目的が変わった」「別の部署の要件が漏れていた」となると、修正コストが大きくなります。
コーポレートサイトの役割や構成については、コーポレートサイトとは|目的と役割、基本構成について解説も参考になります。
最初に行うのは、リニューアルの目的を一文で言語化することです。「サイトが古くなったから」「競合に見劣りするから」では、制作方針も社内説明も曖昧になります。
目的を言語化するときは、以下の問いに答える形で整理すると進めやすくなります。
現在の課題:どういう問題が起きているか(採用応募が少ない、問い合わせ数が伸びない、更新に時間がかかる、など)
リニューアル後の状態:どうなっていれば成功か(具体的な数値目標があれば設定する)
なぜ今か:このタイミングで行う理由は何か(組織変更、ブランド刷新、SEO対策など)
この3点を整理した文書(A4一枚程度)を作成しておくと、その後の社内説明や制作会社へのブリーフィングに使い回せます。
コーポレートサイトのリニューアルには、複数の部署が関わります。経営層・マーケティング・広報・営業・IT・人事など、各部署が異なる要望を持っているケースが多く、合意形成をどの順番で行うかが重要です。
まず、関係する人を3つに分類して書き出します。
最終決裁者:予算承認や方針決定を行う人(経営層または事業責任者)
主要関係者:日常的にサイトを使う部署(マーケティング・広報・採用担当など)
技術担当者:サーバーやドメイン管理、セキュリティ要件を確認する人(IT・情報システム)
一般的には「現場の意見を集める → 担当者が要件を整理する → 決裁者に承認を取る」という流れが機能しやすいです。各部署からの要望を直接経営層に伝えると、個別最適の要望が衝突して話がまとまらないことがあります。
経営層への承認を取る段階では、先ほど整理した目的に概算コストとスケジュールを添え、以下の3点をセットで伝えると判断しやすくなります。
現状の課題と数値:更新に何時間かかっているか、問い合わせ数はどう推移しているかなど、現状を示せるデータ
リニューアル後のゴール:何が変わればよいか、可能であれば数値目標(問い合わせ数○%増など)
概算コストとスケジュール:どの程度の予算と期間が必要か(外注の場合は相見積もりを添えると承認が得やすくなります)
「サイトが古くなった」だけでは承認を得にくく、「現状の課題 → 解決策 → 期待効果」の流れで説明することで、プロジェクトとして承認を得やすくなります。
社内合意を進める前に、「誰の承認が何フェーズで必要か」を整理しておきます。リニューアルプロジェクトでよくある承認フローは以下のとおりです。
企画フェーズ:目的・方針・予算規模の承認(経営層)
要件定義フェーズ:機能・デザイン要件の承認(各部署責任者)
制作フェーズ:デザイン案・コンテンツの承認(関係部署)
公開前:最終確認と公開承認(経営層または事業責任者)
このフローを最初に関係者と共有しておくと、「あとから誰かに差し戻される」リスクを減らせます。
要件整理は「現状の問題を整理する」ことから始めます。リニューアル後に何を改善したいかを明確にするため、以下の観点で現サイトを評価してみてください。
デザイン:ブランドイメージと一致しているか、スマートフォンで崩れないか
コンテンツ:情報が古くなっていないか、必要なページが網羅されているか
パフォーマンス:表示速度は問題ないか、SEOの状況はどうか
運用性:更新作業に専門知識が必要か、担当者が変わっても引き継げる構造か
技術的負債:現在のCMSやサーバー環境はセキュリティ上の問題がないか
特に「運用性」と「技術的負債」は、外から見えにくい問題として積み重なりやすい箇所です。構築した担当者がすでに退職しており、現在のサイトの構造を誰も把握していない、という状態のまま年単位でリニューアルが先送りになるケースは珍しくありません。
アソビューでは、過去に構築したオープンソース型CMSが数年間アップデートされておらず、構築者の退職後は全容を把握できる人員が不在になっていました。バナー一つの追加でもエンジニアの関与が必要な状態が続いており、セキュリティ面からもリニューアルが急務になっていました。最終的にデザイナー1人が約3ヶ月でStudioへの移行・リニューアルを完了し、日々の運用作業工数が2〜3割削減されました(彦坂様の体感値)。
現状課題が整理できたら、次にリニューアル後の要件を以下の3軸で整理します。
機能要件:サイトに必要な機能を列挙します。
お知らせ・ニュースリリースのCMS管理
採用情報のページ構成
問い合わせフォームの仕様(必須項目、送信後のアクション)
多言語対応の有無
外部システム(CRMやMAツール)との連携
デザイン要件:ビジュアルの方向性を決めます。
ブランドカラーやフォントのルール
参考にするサイトの収集(3〜5サイト程度)
モバイル優先かデスクトップ優先か
コンテンツ要件:既存コンテンツの扱いを決めます。
現サイトのページで残すもの・作り直すもの・削除するもの
新たに追加が必要なコンテンツ
画像・動画・PDFなど素材の準備状況
要件定義の詳細については、Webサイトの要件定義とは?必要な理由や手順、決めるべき11の項目を解説も参考になります。
制作に入る前に、以下の技術的な確認を済ませておきます。
ドメインとサーバー:現在の契約状況、管理者、移行の可否
セキュリティ要件:IT部門や情報システム部門が要求する情報セキュリティ基準(ISMSやSOC2など、第三者認証の有無を確認する場合があります)
アクセシビリティ:公共性の高いサイトはもちろん、企業サイトでも配慮が求められる場面が増えています
移行後の運用担当者:誰がどの頻度でサイトを更新するか
特に「移行後に誰が更新するか」は、ツール選定にも直結します。エンジニアが関与せずに非エンジニアが日常的に更新できる体制が必要であれば、CMSの使いやすさを選定基準に加える必要があります。
制作方針を決める前に、内製と外注のどちらが自社の状況に合うかを確認します。判断の基準になりやすい軸を以下に整理します。
制作リソース:社内にデザイナーや制作担当者がいれば内製が選択肢になります。いない場合は外注に依頼するのが現実的です
更新頻度:公開後も頻繁に更新する予定であれば、自社メンバーが操作しやすいCMS構成を選ぶことが重要になります
求める品質と予算:外注は制作品質にコストをかけられる反面、費用がかかります。内製はコストを抑えられる場合がありますが、社内工数の確保が前提です
スピード:短納期が求められる場合は、外部の専門会社に依頼した方が品質を保ちながら進められることもあります
いずれにせよ、どちらが優れているということはなく、自社の体制・予算・将来の運用設計によって適切な選択は変わります。
外注を選択する場合、制作会社の選定で確認しておくとよい点を挙げます。
コーポレートサイトの制作実績:同業種・同規模の事例があるか
CMS構成の提案内容:公開後に自社で更新できる構造を提案してくれるか
コミュニケーションの体制:窓口担当者が明確で、進捗を定期的に共有してくれるか
公開後の保守・サポート:トラブル対応や軽微な修正依頼に対応してくれる
複数社から見積もりを取る場合、条件を統一した提案依頼書(RFP)を用意すると比較がしやすくなります。制作会社の選び方については、コーポレートサイト制作が得意な制作会社5社|参考事例・予算目安ありも参考になります。
内製の場合、CMSやノーコードツールの選定がポイントになります。デザイナーや非エンジニアが更新作業を担うことを前提にするなら、コーディング知識なしで操作できるツールが候補に挙がります。
ソラコムのコーポレートサイトリニューアルでは、WordPressからノーコードツール(Studio)への移行を行い、実装工数を従来の2分の1に短縮した事例があります(中根様の感覚値。コーディングと比べた場合の推定)。3ヶ月という限られた期間でリニューアルを完了できた背景には、デザイナー1人がデザインから公開までを一気通貫で担えたことがありました。また、リニューアル時にCMSのテンプレート化・ルール化を同時に整備したことで、公開後の更新作業のハードルも下がりました。
ただし、ノーコードツールで対応できる範囲にはツールによって違いがあります。高度なカスタム機能や外部システムとの複雑な連携が必要な場合は、エンジニアが関与できる体制や、独自のコード(HTMLなど)を追加して機能を拡張できるかを事前に確認しておくことが必要です。
制作が完了したら、旧サイトから新サイトへの切り替え作業に入ります。公開日の設定・関係者への告知・移行手順の段取りを事前にまとめておきます。
まず、新サイト自体の品質を確認します。確認すべき主な項目は以下のとおりです。
コンテンツの最終確認:テキスト・画像・リンク切れのチェック
フォームの動作確認:送信先のメールアドレスや通知設定が正しいか
アクセス解析の引き継ぎ:Google Analyticsなどのタグが新サイトに設置されているか
OGP設定の確認:SNSでシェアされたときにタイトルやサムネイルが正しくプレビューされるか(OGPはSNS表示用のメタ情報です)
モバイル表示の確認:実機(iOS/Android)で表示崩れがないか
旧サイトのURLと新サイトのURLが変わる場合、恒久的な転送設定(301リダイレクト)が必要です。この設定を省略すると、旧URLに蓄積されたSEO評価が引き継がれず、公開後にアクセス数が大幅に低下するリスクがあります。
リダイレクト設定の基本的な考え方は次のとおりです。
同一URLを維持できるページ:リダイレクトは不要(引き続き同じURLで公開)
URLが変わるページ:旧URLから新URLへ301リダイレクトを設定する
削除するページ:外部からリンクされているページは404ではなく適切なページへリダイレクトする
移行後はGoogle Search ConsoleでURLの認識状況を確認し、クロールエラーが出ていないかを定期的にチェックします。
サイトの品質確認とリダイレクトの設計が済んだら、公開当日の切り替え作業に入ります。当日に対応する主な作業は以下のとおりです。
旧サイトのバックアップ取得:問題が起きたときに元へ戻せるよう、切り替え前に取得します
検索除けの解除:制作中のサイトは検索エンジンに登録されないよう設定(noindexやrobots.txtによるクロール拒否)をかけているのが通常です。公開時にこの解除を忘れると新サイトが検索結果に表示されなくなるため、当日の確認で最も優先したい項目です
ドメインの切り替え:サーバーの向き先を新サイトに変更します
リダイレクトの動作確認:旧URLから新URLへ意図どおり転送されるかを実際にアクセスして確かめます
HTTPSの確認:切り替え後、新サイト側で証明書が正しく効いているか(ブラウザに警告が出ないか)を確認します
あわせて、問題が起きたときに誰の判断で旧サイトへ戻すかという切り戻しの手順も、事前に決めておくと安心です。
ドメインの切り替えは、サーバーの向き先を変える設定(DNS変更)が世界中に伝わるまで数時間〜最大48時間かかる場合があります。反映を早めるため、切り替えの数日前にこの設定の更新間隔(TTL)を短くしておく方法もあります。公開時間に余裕を持ったスケジュールを設定しておくと安心です。
公開後はGoogle Search Consoleに新しいサイトマップを送信し、再クロールを依頼することで、検索エンジンへの認識を早められます。
公開後に誰がどういうフローでサイトを更新するかを、あらかじめ決めておきます。「更新が必要になったら担当者に連絡する」という曖昧な状態では、更新が後回しになりやすく、情報が古くなります。
最低限、以下の項目を決めておくと運用が安定します。
更新担当者:誰がサイトにログインして更新を行うか
更新フロー:依頼 → 原稿確認 → 入稿 → 公開の流れと承認者
緊急対応:誤った情報を公開してしまった場合の修正手順
定期メンテナンス:CMSのバージョン管理や証明書の更新サイクル
リニューアル後は、目標に対して実際の効果を測定します。測定項目はリニューアルの目的に応じて変わりますが、一般的に以下の指標が参照されます。
アクセス数・セッション数:リニューアル前後での変化
問い合わせ数・応募数:最終目標値(KGI)として設定している指標
直帰率・滞在時間:サイトの使いやすさを示す補助指標
検索順位・自然流入数:SEOの引き継ぎが正常に行われているか
リニューアル直後は一時的にアクセス数が変動することがあります。短期的な数値の動きに一喜一憂せず、3ヶ月程度のスパンで評価するのが適切です。
「サイトを新しくしたい」という漠然とした理由で進めると、制作途中で「やはり目的が変わった」「別の要件が出てきた」という事態が起こりやすくなります。目的・対象・成功指標を最初に文書化し、関係者に合意を取ってから制作に移ることが重要です。
「まずデザイン案を作ってから社内で見せよう」と進めると、承認フェーズで大幅な手戻りが発生するリスクがあります。デザインは一度作ると修正しにくい(費用と工数がかかる)ため、方針と要件の段階で合意を取るのが先です。
URLが変わるページのリダイレクト設定を省略したり、アクセス解析タグの設置を忘れたりするケースは珍しくありません。移行後にアクセス数が急落してから気づくと、原因の特定と対応に時間がかかります。公開前の確認項目に必ず含めておくことが必要です。
公開後の更新フローが未定のまま、「必要になったら考える」で進めると、情報の更新が止まりやすくなります。特定の担当者しか操作できない構造や、エンジニアの関与が必須な更新フローは、属人化と情報の陳腐化につながりやすいです。リニューアル時に運用ルールと担当者を決め、文書化しておくことを検討してください。
コーポレートサイトのリニューアルは、制作の前段階である「社内合意の形成」と「要件整理」の精度が、プロジェクト全体の品質に直結します。担当者として最初にやるべきことは、目的を言語化してステークホルダーと合意を取ること、そして機能・デザイン・コンテンツ・技術の要件を整理することです。
移行フェーズでは、リダイレクト設定とアクセス解析の引き継ぎを確実に行い、公開後の運用体制まで設計しておくことで、リニューアルの成果が持続します。制作方針(内製・外注)や使用するツールは、社内の運用体制・予算・スケジュールに合わせて判断することが適切です。
広告代理店・SaaS企業を経て、現在はStudioでマーケティングを管掌。
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