サイトリニューアルの後に検索順位やアクセスが下がる原因はさまざまですが、見落とされやすいのが、旧サイトから新サイトへの移行設計の抜けです。旧URLが積み上げてきた評価を新URLへ確実に引き継ぐには、301リダイレクトの設計を中心にした移行の段取りが欠かせません。
ここでは、リニューアルで検索順位を落とさずに引き継ぐための移行手順を、公開前後の作業とあわせて整理しました。
企画から要件整理まで含む一般的なリニューアルの進め方は、Webサイトのリニューアルの手順にまとめています。この記事はそのうち、SEO評価の移行という技術的な部分に絞って解説します。
リニューアルでSEO評価を引き継げるかは移行設計で決まる
評価を引き継げるかは、移行時のいくつかの作業を漏れなく行えるかで決まります。旧URLと新URLの対応づけ、リダイレクトの設定、内部リンクの張り直しを確実に行えば、これまで積み上げた評価の大部分は引き継げます。逆に、URLが変わったのにリダイレクトを設定していなかったり、削除したページを放置していたりすると、そのページが集めてきた評価は失われます。
リニューアルは、評価を失うリスクがある一方で、サイト構造を整理して評価を高めるチャンスでもあります。どちらに転ぶかは、この後に説明する移行の段取り次第です。
なぜリニューアルで検索順位が落ちるのか
リニューアルという行為そのものが順位を下げるわけではありません。順位が変動するのは、リニューアルに伴ってURLやコンテンツ、内部構造が変わり、検索エンジンがサイトを改めて評価し直すためです。
検索エンジンは、URLごとにページの評価を蓄積しています。リニューアルでURLが変わると、対応づけをしない限り旧URLの評価は新URLに引き継がれません。よくある要因は次のとおりです。
URLの変更:旧URLの評価が新URLに引き継がれず、ゼロから再評価される
コンテンツ量の減少:デザイン刷新の過程でテキストを削りすぎ、情報量が落ちる
内部リンクの断絶:リンク先が旧URLのまま残り、リンク切れが発生する
設定ミス:noindexやrobots.txtの記述が残り、インデックスが妨げられる
これらは、いずれも移行時の対応で防げるものです。なお、公開直後は評価の再計算に時間がかかるため順位が一時的に変動することもありますが、これは対応漏れが原因で順位が下がったまま戻らない状態とは性質が異なります。両者の切り分け方は、後半の順位変動のセクションで説明します。
SEO評価を落とさない移行の手順
移行は、旧サイトの棚卸しから始め、URL設計、リダイレクト、内部リンク、コンテンツ移行、公開前チェック、公開後の監視という順で進めると抜けが出にくくなります。ここからは各ステップを、何をするかとなぜ必要かをセットで説明します。
現状のSEO資産を棚卸しする
最初に行うのは、旧サイトが持っている評価の棚卸しです。どのページが検索流入を集めているかを把握しないまま移行すると、重要なページのリダイレクトを見落とすことになります。
具体的には、旧サイトの全URLを一覧化し、それぞれの検索流入数や被リンクの有無を確認します。Search Consoleやアクセス解析のデータを使うと、流入の多いページと少ないページを判別できます。
すべてのURLを完璧に把握する必要はありません。検索エンジンの案内でも、まずセッション数やページビューの多いURLから対処することが推奨されています。優先順位をつけて、評価の大きいページから確実に引き継ぐ方針にします。
URL構造は変えないことを基本にする
移行で最もリスクが低いのは、URLを変えないことです。URLが同じであれば、そもそも評価の引き継ぎという問題は起きません。リニューアルだからといって、すべてのURLを刷新する必要はありません。
とはいえ、サイト構造の見直しやドメイン移転など、URLの変更が避けられない場面もあります。変更するかどうかは、次の観点で判断します。
変更する場合も、影響範囲を最小限にとどめます。全ページのURLを一度に変えるより、問題のある箇所だけを変える方が、リダイレクト設定の負荷も再評価のリスクも抑えられます。
旧URLから新URLへ301リダイレクトを設計する
URLを変更する場合、旧URLから新URLへ301リダイレクトを設定することが、評価を引き継ぐうえで最も重要な作業です。301は恒久的な転送を意味し、旧URLが持っていた評価の大部分を新URLに渡します。
設計にあたっては、次の点を押さえます。
ページ単位で対応づける:旧URLと新URLを1対1でマッピングする。すべてを一括でトップページに転送すると、評価が引き継がれずユーザーも迷う
302と混同しない:302は一時的な転送を表すため、恒久的な移行には301を使う。302のままだと評価の引き継ぎが不安定になる場合がある
リダイレクトチェーンを避ける:リダイレクトが数珠つなぎに連なる状態(旧URL→中間URL→新URL)を作らず、旧URLから一度で新URLに到達させる
優先順位をつける:流入や被リンクの多いページから設定し、対応表として管理する
旧URLと新URLの対応表(リダイレクトマッピング)を作っておくと、設定漏れの確認や公開後の検証がしやすくなります。
リダイレクトの設定場所は環境によって異なります。サーバーを自前で管理している場合はApacheの.htaccessやNginxの設定ファイルで記述し、CMSやホスティングサービスを使っている場合は管理画面のリダイレクト設定から登録するのが一般的です。どの方法でも、転送のHTTPステータスが301で返っているか、旧URLが一度で新URLに到達するかを、ブラウザの開発者ツールやリダイレクト確認ツールで検証しておきます。
設定したリダイレクトは、短期間で外さないことも大切です。検索エンジンが新URLへの評価の移し替えを終えるまでには時間がかかるため、301は最低でも1年程度は維持するのが目安です。旧URLへの被リンクや外部からのアクセスが残っているうちに解除すると、その分の評価を引き継げなくなる場合があります。
内部リンクを新URLに張り直す
リダイレクトを設定しても、サイト内のリンクが旧URLを指したままだと、リンクをたどるたびに転送が発生します。転送が積み重なると表示が遅くなり、リダイレクトチェーンの原因にもなります。
そのため、本文中のリンク、グローバルメニュー、パンくずリスト、フッターのリンクなどを、すべて新URLに直接つなぎ直します。内部リンクは検索エンジンがサイト構造を理解する手がかりでもあるため、正しく張り直すことで再評価もスムーズになります。
コンテンツと記事資産を移行する
記事やページの中身を新サイトへ移す作業では、テキスト情報を削りすぎないことが重要です。デザインを優先して本文を画像に置き換えたり、説明文を大幅に減らしたりすると、検索エンジンが読み取れる情報が減り、評価が下がる要因になります。
記事数の多いサイトでは、移行の効率と品質の両立が課題になります。CMSの移行機能を使うと、既存記事をまとめて取り込めます。ビジネスチャットを運営するkubell(旧Chatwork)では、前身のオウンドメディアから100記事以上を、CMSのダッシュボードからタグやカテゴリを一括設定しながら整理・移行しました。
一方で、移行は全自動で完結するとは限りません。WordPressからノーコードツールへ移行したソラコムの事例では、インポート機能で約8割のデータを取り込めた一方、画像の配置やフォントサイズなど細かい調整は記事ごとに必要でした。移行工数を見積もるときは、この残り2割の手作業を織り込んでおくと現実的です。
コンテンツの移行は、蓄積した情報の構造を見直すよい機会でもあります。ソラコムの事例では、移行と同時にCMSのテンプレート化・ルール化を行い、公開後の更新を効率化しています。ツールの移行は、運用フローを整えるタイミングとしても機能します。
公開前に技術的な設定を確認する
公開の直前には、検索エンジンが新サイトを正しくクロールできる状態かを確認します。ここで見落とすと、リダイレクトを正しく設定していても評価が伸びません。確認すべき主な項目は次のとおりです。
noindexの残り:制作中に付けたnoindexタグが、公開ページに残っていないか
robots.txtの記述:クロールを拒否する設定のまま公開していないか
URLの正規化:wwwの有無やhttp・httpsの重複がないか、canonicalが正しく指定されているか
表示速度:画像の最適化などで、表示が極端に遅くなっていないか
これらは公開後にも確認できますが、公開前に潰しておくほど、再評価が滞る期間を短くできます。
公開後にサイトマップを再送信し、監視する
公開したら、新しいURL構成を反映したXMLサイトマップを用意し、Search Consoleから再送信します。サイトマップは検索エンジンに新しいページの存在を伝える案内役で、再送信によってクロールとインデックスの更新を促せます。サイトマップの役割や作り方は、サイトマップとは|種類や必要性、簡単な作り方にまとめています。
送信後は、Search Consoleでクロールエラーやインデックスの状況を継続的に監視します。旧URLへのアクセスが404になっていないか、リダイレクトが意図どおり働いているか、インデックス数が想定どおり推移しているかを確認します。リンク切れや設定漏れが見つかれば、その都度修正します。
リニューアル直後の一時的な順位変動をどう扱うか
公開直後に順位が変動しても、すぐに設定ミスと判断する必要はありません。検索エンジンが新しいURLをたどり直し、評価を再計算するまでには時間がかかるためです。この期間の変動は、多くの場合で一時的なものです。
問題は、変動が一時的か、対応漏れが原因で順位が下がったまま戻らないものかの切り分けです。次のような観点で確認します。
リダイレクトは正しく働いているか:主要な旧URLが、意図した新URLへ301で転送されているか
インデックスは進んでいるか:Search Consoleで新URLのインデックスが増えているか
コンテンツは維持されているか:移行の過程で本文量が大きく減っていないか
これらに問題がなければ、再インデックスが進むのを待つ判断が妥当です。焦って設定を戻すと、再評価をやり直させることになりかねません。一方で、特定ページだけが下がったまま戻らない場合は、リダイレクトの漏れやコンテンツの減少といった原因を切り分け、該当箇所を修正します。
移行を成功させた実例から学ぶ
大規模なサイトでも、移行設計を丁寧に行えば評価を落とさずに移せます。人材サービスを手がけるパーソルキャリアでは、約200ページ規模のオウンドメディアを、サブディレクトリから独立ドメインへ移設しました。ページ数が多いほど移行の難度は上がりますが、リリース後3ヶ月でユーザー数と表示回数は約1.3倍に増え、多くのキーワードで上位に表示されるようになっています。
この事例で評価が伸びた要因のひとつは、複数のデザインギャラリーサイトに取り上げられ、被リンクが増えたことにあります。移行そのものが順位を押し上げるわけではありませんが、評価を落とさずに移せていたからこそ、その後の伸びにつながったといえます。ページ数が多いサイトほど、移行設計の良し悪しが結果に累積的に効いてきます。
まとめ
リニューアルでSEO評価を落とさないための要点は、次のように整理できます。
旧サイトの資産を棚卸しし、流入や被リンクの多いページから優先的に引き継ぐ
URLは変えないことを基本にし、変更する場合は旧URLから新URLへ301リダイレクトを設計する
内部リンクを新URLに張り直し、リダイレクトチェーンを避ける
コンテンツ量を維持し、記事資産の移行では手作業の工数も見積もる
公開前にnoindexやrobots.txtを確認し、公開後はサイトマップを再送信して監視する
移行は一度で完璧に終わるものではなく、公開後の監視と修正まで含めて設計するものです。公開後のSEO施策については、WebサイトにSEO対策をする際のポイントもあわせて参考にしてください。