Webサイトの内製化とは|外注との違い・判断基準・進め方を解説
村上 悠希
2026.08.21
Updated:2026.08.21
Webサイトの内製化を検討し始めると、「全部を自社で作るのは無理では」という不安が先に立ちがちです。しかし内製化は、必ずしも制作のすべてを自前でまかなうことを指すわけではありません。 ここでは内製化の意味を整理したうえで、外注との違い、向き不向きの判断軸、サイトの種類ごとの効きどころ、進め方、必要な体制までをまとめました。

村上 悠希
2026.08.21
Updated:2026.08.21
Webサイトの内製化を検討し始めると、「全部を自社で作るのは無理では」という不安が先に立ちがちです。しかし内製化は、必ずしも制作のすべてを自前でまかなうことを指すわけではありません。 ここでは内製化の意味を整理したうえで、外注との違い、向き不向きの判断軸、サイトの種類ごとの効きどころ、進め方、必要な体制までをまとめました。

Webサイトの内製化を検討し始めると、「全部を自社で作るのは無理では」という不安が先に立ちがちです。しかし内製化は、必ずしも制作のすべてを自前でまかなうことを指すわけではありません。
ここでは内製化の意味を整理したうえで、外注との違い、向き不向きの判断軸、サイトの種類ごとの効きどころ、進め方、必要な体制までをまとめました。
Webサイトの内製化とは、サイトの企画・制作・運用・改善を、外部への依頼を前提にせず、自社の判断とスピードで進められる状態にすることです。制作をすべて自前で行うことが目的ではありません。修正や改善のたびに社外の稼働を待つのではなく、必要な変更を自分たちのタイミングで反映できるようにすることが軸になります。
内製化を考えるときは、「作る内製化」と「運用する内製化」を分けて捉えると整理しやすくなります。
作る内製化:サイトの設計や初期構築そのものを社内で行うこと
運用する内製化:公開後の更新・修正・コンテンツ追加を社内で回すこと
先に効果が表れやすいのは、後者の運用する内製化です。初期の設計や大きなデザイン変更は外部の力を借り、日常の更新だけを社内に移す形も、立派な内製化のひとつです。内製化は「全部を自社でやるか、全部を外注するか」の二択ではありません。業務単位で線を引ける連続的なものだと考えると、現実的な一歩を踏み出しやすくなります。
Webサイトの変更には、出したい日が先に決まっているものが多くあります。プレスリリースの公開日、料金改定の施行日、選考スケジュールに合わせた募集要項の差し替えなどが該当します。
外注を前提にした体制では、このタイミングに合わせにくくなります。1回の修正に手続きと待ち時間がかかるほど、出したい日からずれていくためです。ページを作り替えて試す回数も、同じ理由で減っていきます。
日本経済新聞社が運営する「NIKKEI OFFICE PASS」では、軽微な文言修正や画像差し替えの反映に半月〜1ヶ月かかっていました。句読点一つの削除でも、同じ期間を要していました。社内メンバーだけで更新できる体制に移してからは、修正が即日で反映できるようになりました。開発の優先順位に左右されていたSEO記事の投稿頻度も、月1本程度から月20本近くまで増えています(NIKKEI OFFICE PASSの導入事例)。
内製化が解こうとしているのは、制作費の高さそのものよりも、この待ち時間です。
内製化と外注の違いは、機能の優劣ではなく「どの状況で何が効くか」に表れます。とくに差が出るのは、次の3点です。
変更にかかるスピード
費用のかかり方
社内にノウハウが残るかどうか
外注は、専門的な制作力を必要なときに調達でき、社内リソースを本業に集中させやすい合理性があります。一方で、依頼する量が増えるほど費用も増えやすくなります。内製化は初期に体制づくりの負荷がかかるものの、運用フェーズの費用はツールの利用料と担当者の工数に寄ります。更新頻度が高いほど費用対効果が出やすくなるのはこのためです。
運用の観点で並べると、違いは次のように整理できます。
観点 | 外注中心 | 内製化 |
|---|---|---|
更新スピード | 依頼から公開まで数週間〜1ヶ月かかることがある | 社内確認が取れれば即日〜数日 |
コスト構造 | 依頼した量に応じて費用が増えやすい | 初期構築後はツール利用料と社内工数が中心 |
依頼の手続き | 修正ごとに依頼と確認のやりとりが発生する | 社内の合意だけで進められる |
ノウハウ | 社外に蓄積されやすい | 社内に蓄積される |
専門性の高い制作 | 強み | 体制づくりが前提 |
伊藤忠商事の繊維カンパニーでは、複数のアパレルブランドサイトを運用していました。テキスト修正のたびに営業・情報システム部門・ベンダー間の調整が必要で、軽微な修正でも数週間から1ヶ月超かかることがありました。
複雑なデザインは制作パートナーに任せ、それ以外を社内で更新する体制に変えました。その結果、修正は2週間もあれば社内で完結することがほとんどになりました。サービスサイトの運用コストも約40%削減されています(伊藤忠商事の導入事例)。
内製化の効果は、コストとスピードで語られることが多くあります。ただ、運用を社内に移そうとすると、その前提としてサイトの土台になっているツールや基盤も選び直すことになります。外注前提で組まれていた基盤を見直した結果として、保守やセキュリティ対応の負荷そのものが減る場合があります。ここは検討の初期に見落とされやすい部分です。
オープンソース型のCMSでサイトを運用している場合、OSのパッチ管理やバージョンアップ、脆弱性への対応といった作業が継続的に発生します。この作業は外注していても社内の確認や判断が必要になるため、完全には手離れしません。保守が不要なクラウド型のツールへ移し、運用を社内に寄せると、この負荷を構造的に減らせます。
富士通は、社会課題プロジェクト「エキマトペ」のサイトをWordPressからStudioへ移行しました。セキュリティのインシデント対応やパッチ管理に毎月約10時間かかっていた工数は、移行後にゼロになっています。サイトの世界観を保ったまま移行できたうえで、更新はインターンスタッフでも対応できる状態になっています(富士通の導入事例)。
保守の問題は、放置されるほど動きにくくなる性質もあります。数年アップデートされていないCMSを抱えたまま、構築した担当者が異動や退職でいなくなると、サイトの全容を把握している人が社内に残りません。
この状態が、リニューアルと運用体制の見直しに踏み切る直接の動機になることも珍しくありません。古い基盤を抱えたまま外注更新を続けている場合、保守リスクは判断材料として見逃せません。
内製化の検討では、実態と異なる思い込みや、条件つきでしか成り立たない前提が判断を鈍らせることがあります。相談の場でよく挙がる3つを整理します。
誤解1:内製化には専門人材の採用が必要:コードを書かずに制作・更新できるツールが登場し、採用をしなくても運用を回している企業があります。求められるのは人材の確保よりも、非エンジニアが扱えるツールを選ぶことです
誤解2:内製にすると必ずデザイン品質が下がる:この懸念は一面では当たっています。ただし崩れるのは見た目だけではありません。設計を省いたまま内製に移すと、つぎはぎの更新が重なって、ページ間の一貫性やサイト構造まで崩れていきます。分かれ目になるのは体制設計です。初期構築で崩れにくい構造を作り、更新できる範囲を適切に制限しておけば、非デザイナーが更新しても品質は保てます。「内製にしたから下がる」のではなく、「設計を省いたから下がる」と捉えるほうが判断を誤りにくくなります
誤解3:内製化すればコストは必ず下がる:外注費は減りますが、担当者の工数とツール費用は発生します。更新頻度が低い場合、削減効果が社内工数の増加に見合わないこともあります。コストは「外注費の増減」ではなく「組織全体の工数と費用」で評価する必要があります
内製化が自社に向いているかは、正解を探すよりも判断軸に照らして考えるほうが答えを出しやすくなります。目安になるのは次の4つの軸です。
更新頻度:お知らせやコンテンツの更新が、どのくらいの頻度で発生しているか
サイト規模:数十ページ程度までか、大規模で複雑な構造か
社内の人材:更新を担える担当者がいて、継続できる体制を作れるか
品質・専門要件:ブランド表現や、決済・会員機能などの特殊要件をどこまで求めるか
更新頻度が高いほど、外注の待ち時間と費用が累積するため、内製化の効果は大きくなります。目安のひとつとして、月1回以上の更新が発生しているサイトは費用対効果が出やすい傾向があります。ただし分岐点は、1回あたりの外注費や社内で確保できる工数によって前後します。更新が年に数回で、そのたびに高度なデザイン変更を伴うようなサイトは、外注を続ける合理性が残ります。
内製化を急ぐ必要はありません。まずは自社のサイトがどの軸でどちらに寄っているかを確認するところから始めると、判断を進めやすくなります。
同じ内製化でも、扱うサイトの種類によって効果の出方と注意点は変わります。自社がどのサイトから着手するかを決めるときの参考になります。
サイトの種類 | 内製化が効きやすい理由 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
コーポレートサイト | お知らせやプレスリリース、IR情報など、鮮度が価値を持つ情報を扱うため、発信の即時性が求められる | 会社の顔として求められる品質が高く、初期構築の設計品質が特に効いてくる |
採用サイト | 新卒の選考スケジュールに加えて中途の募集も随時発生し、募集要項の変更や社員紹介の追加を出したいタイミングで公開できる | 新卒採用の繁忙期には業務量が集中しやすく、人員配置の設計が必要になる |
サービスサイト | 料金改定や機能追加の反映頻度が高く、更新のたびの待ち時間が事業のスピードに直結する | 機能に関わる更新は開発側との調整が残り、Web担当だけでは完結しない範囲がある |
LP | 1本あたりの公開までの期間が短く、キャンペーンや施策のタイミングに合わせやすい | 量産の前にテンプレートの設計を固めないと、かえって管理が煩雑になる |
いずれの種類でも判断の軸そのものは変わりません。更新頻度が高く、担当者を置ける状態であれば、内製化を検討する価値があります。
内製化を成功させるうえで大切なのは、社内に移す業務と外部と組む業務をあらかじめ切り分けることです。すべてを一度に取り込もうとすると、体制が追いつかずに頓挫しやすくなります。
社内に移しやすいのは、次のような日常的で発生頻度の高い業務です。
お知らせやブログ記事などのコンテンツ更新
テキストや画像の差し替え、軽微なレイアウト修正
同じ型のページ(LPなど)の複製・量産
公開後の細かな改善や出し分けの調整
とくに同じ型のLPを繰り返し作る運用は、社内に取り込みやすい業務です。判断のタイミングや段階的な進め方は、LP内製化の始め方をまとめた記事で具体的に整理しています。
一方で、外部の専門性を借りたほうが安全な領域もあります。初期の情報設計やサイト全体のデザイン方針、大規模な機能開発、決済・会員登録のような特殊な仕組みです。
内製化は、全社で一斉に切り替えるよりも、小さく始めて成功事例を作り、そこから広げていくほうが定着しやすくなります。裁量が大きく更新頻度の高い1つのサイトから着手すると、現場の抵抗が少なく、効果も見えやすくなります。おおまかな進め方は次のとおりです。
現状の棚卸し:更新頻度・外注コスト・依頼から公開までの時間を洗い出します
対象サイトの選定:更新頻度が高く、裁量を持てる1サイトを起点にします
ツールの選定:非エンジニアが運用を回せるかを基準に選びます
初期構築:設計や崩れにくい土台づくりは、必要なら制作パートナーと組みます
運用への移行:日常の更新を社内に移し、運用フェーズから自走に切り替えます
横展開:成功事例をもとに、他のサイトや部署へ広げます
最初の棚卸しで出した数字は、そのまま内製化の効果を測る基準になります。移行後に何がどう変わったかを比べられるよう、着手前に控えておくと判断がしやすくなります。
初期構築の段階で共通パーツの設計や操作手順の整備を先に済ませておくと、運用フェーズに移ったあと社内だけで回しやすくなります。操作を録画したレクチャー動画や、同じ型のページを複製できるテンプレートを初期に用意しておく形も有効です。こうした自走のための足場づくりだけ制作パートナーの支援を受け、運用から社内に切り替える進め方も選べます。
内製化には大人数の専任チームが必要と思われがちですが、実際には少人数でも運用を回せます。求められるのは高度なプログラミングスキルではなく、サイトの構成を考える力と、コードを書かずに制作・更新できるツールの操作習得です。
コニカミノルタジャパンのウェブアクセシビリティ支援サービスのサイトは、もともと1枚のランディングページでした。非デザイナーの担当者一人が約4ヶ月で約30ページのサイトへ拡張し、その後の運用を100%内製化しています(コニカミノルタジャパンの導入事例)。担当者一人でも中規模のサイトを構築・運用できることを示す例です。
体制づくりで見落としがちなのが、属人化への備えです。特定の担当者しか触れない状態は、その人の異動や退職で運用が止まるリスクを抱えます。この不安定さと、業務量の波に対する人員配置の難しさは、外注にはない内製特有の弱点といえます。
備えとして有効なのは、引き継ぎのしやすさを設計の基準に組み込むことです。誤操作でレイアウトが崩れない状態にしておけば、更新を任せる相手を広げられます。そのうえで操作手順を記録し、引き継ぎが一度の説明で終わる状態にしておくと、特定の担当者しか更新できない状態を避けられます。
内製化には注意しておきたいつまずきどころがあります。あらかじめ知っておくと、無理のない移行がしやすくなります。
内製化そのものが目的になる:何のために内製するのかが曖昧なまま進めると、ツールを導入しただけで運用が変わらない結果になります。「更新にかかる日数を何日にしたいか」など、目的を数値で持つことが出発点になります
既存サイトをそのまま社内運用に移す:構造的な問題も一緒に引き継いでしまいます。移行はサイト構造を見直す機会と捉えると効果が大きくなります
コスト削減だけを目的にする:削減額よりも、浮いた時間と予算を企画やコンテンツの改善に再投資できるかが本質です
とくに最後の点は見落とされやすく、内製化が定着するかどうかの分かれ目になります。浮いた余力の使い先を着手前に決めておくと、移行後の評価もしやすくなります。
内製化の成否は、ツール選びで大きく左右されます。判断の中心に置きたいのは、「初期構築のあと、非エンジニアだけで運用を回せる状態にできるか」という観点です。CMSで記事だけ更新できても、デザイン修正のたびに外注が残るなら、運用コストの削減幅は限られます。
選択肢としては、更新のしやすさを重視するならCMSやノーコードのツールが候補になります。種類ごとの特徴や選定基準は、CMSの選び方を種類別にまとめた記事で詳しく整理しています。
ノーコードWeb制作プラットフォームの「Studio」も、コーポレートサイトやサービスサイト、LPの内製化では選択肢の一つになります。コードを書かずにデザインから公開・運用まで行えるためです。ただし決済やログインなどの機能は、Studio単体では提供されていません。こうした要件がある場合は、外部サービスとの連携や別の手段を検討することになります。
ツール自体のアクセシビリティ対応や、定期的な脆弱性診断が行われているかといった条件も、業種によっては選定の前提になります。自社の事業に直結する条件を先に洗い出しておくと、選定の判断がぶれにくくなります。
内製化を検討するときは、更新頻度・サイト規模・社内の人材・品質要件の4軸で向き不向きを見極めます。向いている業務から小さく始めて段階的に広げるのが、定着への近道になります。
効果はコスト削減だけに表れるものではありません。変更を出したいタイミングで反映できるようになり、その結果として改善を試す回数が増えます。運用基盤によっては、保守やセキュリティ対応の負荷が減ることもあります。
複数の企業の事例を横断して見ると、内製化の起点には共通した傾向があります。「外注に出さないと更新できない」「特定の担当者しか操作できない」状態の解消です。
ツールは「非エンジニアだけで運用を回せるか」を基準に選ぶと、導入後のつまずきを避けやすくなります。まずは現状の外注費と、依頼から公開までにかかっている日数を棚卸しし、実際に内製化した企業の事例から自社に近いケースをたどってみてください。
広告代理店・SaaS企業を経て、現在はStudioでマーケティングを管掌。
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